近年、マスメディアやSNSなどで「琉球ユタ」「沖縄ユタ」を名乗る占い師が現れ、巷でも知られるようになりました。「ユタ」という神秘的な響きに惹かれ、「ぜひユタに鑑定してほしい」と考えている方も少なくないでしょう。
ですが、そもそもユタとは何者なのでしょうか。
占い師? 巫女? 霊能者?
この記事では、沖縄ユタの歴史や鑑定方法をわかりやすく丁寧に解説いたします。
ユタの始まり
沖縄の集落では古くから「ニーガン」や「ノロ」と呼ばれる神女がおり、祭祀、死者の埋葬、病気治療などを行っていました。
15世紀に入ると、神女は琉球王府から「ノロ」として正式に任命、配置され、組織の中に取りこまれていきました。
その結果、ノロは祭祀だけに専念し、個人の頼み事や死の穢れなどからは距離を置くようになります。
一方で、死者の儀礼や先祖供養、占いなど、人々の生活にかかわる人たちを、ユタと呼ぶようになりました。
ノロは公職なので、身分や賃金が保証され、職業として親子代々に受け継がれていきます。
一方、ユタは相談者から対価を受け取り、世襲ではありません。
ユタの条件「サーダカンマリ」
ユタになりたいと願っても、自分の意思でなれるものではありません。
ユタになるには「サーダカンマリ」といわれる、霊的体質の持ち主であることが必須です。
幼いころからサーダカンマリの持ち主は未来を予知したり、死んだ人の霊をみたり、祖霊と交信したりなど、何度も不思議な体験をし、周りからもサーダカンマリと認識されます。
神様からの警告「カミダーリ」
サーダカンマリの持ち主に神様が乗り移ると、「カミダーリ」と呼ばれる状態になります。
精神的に不安定となり家に引きこもったり、幻覚幻聴がひどくなったり、意味不明なことを口走ったりなど、はたから見ると気がふれたような状態になります。
医者に診せても原因がわからず、放っておけば体調までもが悪化していきます。
カミダーリは、ユタになるようにとの神様からの啓示だとされています。
カミダーリになった者はユタのところに連れていかれ、本当にカミダーリであるかどうかをユタが判断します。
もしもユタになる運命を拒否すれば、カミダーリはさらにひどくなり、家族が不幸な目に遭ったりすることもあるそうです。
その後は、ユタになるための修業が始まります。
先輩のユタに導かれながら、御嶽や聖地を訪れ、ユタの知識や技能を習得し、自分のチジガミ(守護神)を得て、一人前のユタになっていくのです。
その過程で、カミダーリは治まっていきます。
ユタにできること
ユタの行う仕事のことを「ユタグトゥ」といいます。
ユタグトゥは多岐にわたっており、運勢判断、家族の問題、祖先供養、亡くなった人の儀礼、引っ越しの日取りや方位・方角の吉凶、恋愛相手との相性、仕事に関わる事、心身の不調の意味付けなど、たくさんあります。
ユタはそれぞれ、自分の得意とする分野(バン)を持っています。
ユタの占い方
ユタは相談者と話をしながら悩みや問題の原因を聞き出し、解決方法を明らかにしていきます。
この過程を「ハンジ」(判事)といい、およそ30分から1時間ほどかけます。
ハンジを出すとき、まずユタは、祭壇に祭られたチヂガミ(守護霊)に手を合わせます。
その後は、神様や祖霊と交信したり、易の本を参照したり、線香の燃え方や米粒をみたり、亡くなった人や祖先の霊に憑依されたりしながら、ハンジを出します(方法はユタによってさまざまです)。
相談者は、ユタの言葉に納得ができればハンジを受け入れ、納得ができないときは、別のユタにハンジを求めることもあります。
ユタはどこにいる?
基本的にユタは看板を出したり、自分がユタだと公言することはありません。
過去にユタが「高額の報酬を要求する」「人心を惑わす」と王府や政府によって禁止され、弾圧を受けたことが原因であるともいわれています。
では、どうやってユタを探すかというと、家族や親戚、知人などに紹介してもらいます。
あなたがユタに鑑定してほしいならば、まずは沖縄で知人を作り、ユタと面識ある人を教えてもらいましょう。
男性より女性、若い人より年配の人の方が、ユタにみてもらった経験が多いようです。
ユタの言い回しは独特でわかりにくいところがあるので、通い慣れている人に付き添ってもらい、解説をしてもらうと安心です。
ユタの占いは当たるのか?
占いブームに乗じて「ユタ」を名乗る占い師が増えていますが、前述したように、本来はユタは自分から表には出てこない存在なので、盲目的に信じるのは考えものです。
本土の霊能者や占い師がすべて本物ではないように、「ユタ」にも本物と偽物がいます。
沖縄ではサーダカンマリでもなく、カミダーリの体験もないのに、ユタを名乗る人たちを「ユタマンチャー」「ユタ崩れ」と呼んでいます。
いわば、金儲けのためにユタを騙っている偽物ユタです。
また、強い霊力(セジ)がありながらも、異常に高額な報酬を求めるユタもおり、サーダカンマリだということが人間性を保証しているわけでもありません。
これらの点に気を付けながら、沖縄独自の死生観と神の概念の担い手であるユタにみてもらうのがよいでしょう。